葦引の山のまにまに隠れなむ
憂き世の中はあるかひもなし
- 歌の意味
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山の奥へ奥へと入るままに隠れてしまおう。つらい世の中は、生きている甲斐もない。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 953
詞書「題しらず」
つらい世に生きる甲斐はないとして、山の奥深くに身を隠そうと詠んだ歌である。「かひ」に山あいの「峡」と「甲斐」を掛け、山に入る決意と世の無価値さとを一つの言葉で結びつけている。
前歌までの山に逃れる願いが、ここでは「隠れなむ」というはっきりした決意として示されている。
作者は「読人しらず」とされ、名は伝わらない。
初句「葦引の」は、「山」にかかる枕詞である。本文は「葦引」と表記する。
二句「山のまにまに」は、山の奥へと従うままに、の意。「まにまに」は成り行きに任せるさまをいう。
三句「隠れなむ」は、隠れてしまおう、の意。「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「む」は意志で、三句切れである。
四句「憂き世の中は」は、つらい世の中は、の意である。
結句「あるかひもなし」は、生きている甲斐もない、の意。「かひ」は「甲斐」と山あいの「峡」を掛けた掛詞で、上の句の「山」と響き合う。
かひ:「甲斐」と、山あいの谷を意味する「峡(かひ)」を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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いかならむ巌の中に住まばかは 世の憂きことの聞こえこざらむ
- 次の歌
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世の中の憂けくに飽きぬ奥山の 木の葉に降れる雪や消なまし