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あしひきの山に生ふてふもろかづら
もろともにこそ入らまほしけれ

歌の意味
山に生えるというもろかずらの名のように、あなたともろともに、一緒にこそ山に入りたいものだ。
鑑賞
巻第十 恋歌二 694

詞書「返し」
 山に生えるというもろかずらのように、あなたと一緒にこそ山に入りたい、と詠んだ歌である。山に入ったのかと皮肉った女に、山に入るならあなたと一緒に入りたいと切り返している。
 前歌の第六百九十三首に対する返しで、前歌の「山の端に入り」を受けて「入らまほしけれ」と応じている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「あしひきの」は、「山」にかかる枕詞である。
 二句「山に生ふてふ」は、山に生えるという、の意である。
 三句「もろかづら」は、葵と桂を組み合わせた髪飾りの草のことで、初句から三句までが、同じ音の「もろ」を重ねて四句の「もろともに」を導く序詞となっている。
 四句「もろともにこそ」は、あなたと一緒にこそ、の意で、「こそ」は強めの係助詞である。
 結句「入らまほしけれ」は、入りたいものだ、の意で、四句の「こそ」を受けて已然形で結ぶ係り結びとなっている。前歌の結句「入りやしにけん」に応じている。

もろかづら:葵と桂を組み合わせた髪飾り、またその草
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
出でしより見えずなりにし月影は 又山の端に入りやしにけん
次の歌
浜千鳥頼むを知れとふみ初むる あとうち消つな我を越す浪