袂より落つる涙はみちのくの
衣川とぞ言ふべかりける
- 歌の意味
-
袂から流れ落ちる涙は、陸奥の衣川と呼ぶべきものであったよ。
- 鑑賞
-
巻第十二 恋歌二 762
詞書は前の歌に続き「題しらず」
袂から落ちる涙は、陸奥の衣川と呼ぶのがふさわしいと詠む歌である。陸奥の歌枕の衣川の名に「衣」を見て、衣の袂から川のように流れ落ちる涙の多さを誇張して表している。前の二首の濡れる袖を受け、ここでは袂から流れる涙を川にたとえている。
初句「袂より」は、袂から、の意である。
二句「落つる涙は」は、流れ落ちる涙は、の意である。
三句「みちのくの」は、陸奥国の、の意である。
四句「衣川とぞ」は、陸奥の歌枕の衣川と、の意で、「衣」は初句の「袂」の縁語である。係助詞「ぞ」は結句の連体形「ける」で結ぶ係り結びである。
結句「言ふべかりける」は、呼ぶべきものであったよ、の意で、「べかり」は当然、「ける」は気づきの詠嘆を表す。
みちのく:陸奥。東北地方の古称
ころもがは:衣川。陸奥国の歌枕
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
我が思ふ人は草葉の露なれや かくれば袖のまづそほつらむ
- 次の歌
-
衣をや脱ぎてやらまし涙のみ かかりけりとも人の見るべく