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つれなきを思ひしのぶのさねかづら
果てはくるをも厭ふなりけり

歌の意味
冷淡なのを耐え忍んで思い続けてきたが、さねかずらを手繰るように、しまいには私が来ることさえ嫌うのだなあ。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 787

詞書「女のもとにまかりたるに、はや帰りねとのみ言ひければ」
 つれないのを忍んで思い続けてきたが、しまいには来ることさえ嫌うのだ、と詠んだ歌である。冷たさに耐えて通ってきたのに、早く帰れとまで言われた男の嘆きを、さねかずらの縁語で詠んでいる。
 詞書によれば、女のもとへ行ったところ、早く帰ってくれとばかり言われたので詠んだ歌である。本巻の巻頭歌の第七百首と同じく、「さねかづら」と「くる」を用いており、巻頭では人に知られずに来る手だてを願ったのに対し、本歌では来ることさえ嫌われている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「つれなきを」は、冷淡なのを、の意である。
 二句「思ひしのぶの」は、耐え忍んで思い続ける、の意で、「しのぶ」は耐え忍ぶ意と、植物の忍草を響かせ、三句の「さねかづら」を導いている。
 三句「さねかづら」は、つる性の植物で、つるを繰ることから結句の「くる」の縁語となっている。巻頭歌の第七百首の三句と同じ語である。
 四句「果てはくるをも」の「くる」は、人が「来る」と、つるを「繰る」を掛ける掛詞である。
 結句「厭ふなりけり」は、嫌うのだなあ、の意で、「なりけり」は気づきの詠嘆を表す。

さねかづら:モクレン科のつる性の植物、ビナンカズラ
くる:「来る」の意と、つるを「繰る」意を掛ける
いとふ:嫌う、避ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
道知らでやみやはしなぬ逢坂の 関のあなたはうみといふなり
次の歌
今更に思ひ出でじと忍ぶるを 恋しきにこそ忘れわびぬれ