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道知らでやみやはしなぬ逢坂の
関のあなたはうみといふなり

歌の意味
道を知らないまま、そのまま終わってしまわないものだろうか。逢坂の関の向こうは、湖の海、つらい「憂み」だというから。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 786

詞書「返し」
 道を知らないまま終わってしまえばよい、逢坂の関の向こうは海だというから、と詠んだ返歌である。関を越えた先には湖の海、すなわちつらい思いがあるだけだと言って、逢うことをやんわりと拒んでいる。
 前歌の第七百八十五首に対する返しである。
 作者の「しもつけ」は、下野と呼ばれた女房である。経歴は詳しく伝わらない。

 初句「道知らで」は、道を知らないで、の意で、前歌の二句「しるべなくても」を受けている。
 二句「やみやはしなぬ」は、終わってしまわないだろうか、の意で、「やは」は反語を表し、そのまま終わってしまえばよいという意を込めている。ここで句切れとなる。
 三句「逢坂の」は、山城の国と近江の国の境にある逢坂の、の意で、本巻の巻頭歌の第七百首にも詠まれている。
 四句「関のあなたは」は、関の向こう側は、の意で、前歌の四句「関のこなたは」と対をなしている。
 結句「うみといふなり」の「うみ」は、近江の湖である「海」と、つらい意の「憂み」を掛ける掛詞である。「なり」は伝聞を表す。

うみ:近江の湖の「海」の意と、つらい意の「憂み」を掛ける
やむ:終わる、途絶える
作者
下野
出典
後撰和歌集
前の歌
あふみちをしるべなくても見てしがな 関のこなたはわびしかりけり
次の歌
つれなきを思ひしのぶのさねかづら 果てはくるをも厭ふなりけり