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あふみちをしるべなくても見てしがな
関のこなたはわびしかりけり

歌の意味
逢う道である近江路を、道案内がなくても見てみたいものだ。逢坂の関のこちら側にいるのは、つらいことだ。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 785

詞書「女のもとにつかはしける」
 逢う道である近江路を案内がなくても見たい、関のこちら側はつらい、と詠んだ歌である。逢坂の関を越えた先の近江に「逢ふ道」を重ね、まだ逢えずに関のこちらにとどまるつらさを訴えている。
 詞書によれば、女のもとへ送った歌である。次歌の第七百八十六首は下野の返しである。
 作者の源中正は、平安時代前期の人物で、経歴は詳しく伝わらない。

 初句「あふみちを」は、「逢ふ道」と、近江の国へ向かう道である「近江路」を掛ける掛詞である。
 二句「しるべなくても」は、道案内がなくても、の意である。
 三句「見てしがな」は、見たいものだ、の意で、「てしがな」は願望を表す。ここで句切れとなる。
 四句「関のこなたは」は、関のこちら側は、の意で、逢坂の関を指す。次歌の第七百八十六首の四句「関のあなたは」と、こちらとあちらの対をなしている。
 結句「わびしかりけり」は、つらいことだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。

あふみぢ:「逢ふ道」の意と、近江の国へ向かう道の「近江路」の意を掛ける
しるべ:道案内
作者
源中正
出典
後撰和歌集
前の歌
我がためはいとど浅くやなりぬらん 野中の清水深さまされば
次の歌
道知らでやみやはしなぬ逢坂の 関のあなたはうみといふなり