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我がためはいとど浅くやなりぬらん
野中の清水深さまされば

歌の意味
私に対するあなたの思いは、いっそう浅くなってしまったのだろうか。野中の清水、もとの妻への思いの深さがまさったので。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 784

詞書「もとの妻に帰り住むと聞きて、男のもとにつかはしける」
 私への思いはいっそう浅くなったのだろうか、野中の清水の深さがまさったので、と詠んだ歌である。もとの妻のもとに戻った男に、古い縁が深まった分、自分への思いは浅くなったのかと恨みを述べている。
 詞書によれば、男がもとの妻のもとに帰って住むと聞いて、その男に送った歌である。古今和歌集の「いにしへの野中の清水ぬるけれどもとの心を知る人ぞ汲む」の歌を踏まえ、野中の清水をもとの妻のたとえとしている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「我がためは」は、私に対しては、の意である。本巻の第七百八十九首の初句も「我がためは」で、同じ句を共有している。
 二句「いとど浅くや」は、いっそう浅く、の意で、「や」は疑問の係助詞である。
 三句「なりぬらん」は、なってしまったのだろうか、の意で、二句の「や」を受けて連体形「らん」で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなり、四句以下と倒置の関係にある。
 四句「野中の清水」は、野の中にわく清水で、古今和歌集の歌を踏まえ、もとの妻をたとえている。
 結句「深さまされば」は、深さがまさったので、の意で、二句の「浅く」と結句の「深さ」が対をなしている。

のなかのしみづ:野の中にわく清水。昔なじみの人のたとえとされた
もとのめ:もとの妻
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
あらたまの年も越えぬる松山の 波の心はいかがなるらむ
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あふみちをしるべなくても見てしがな 関のこなたはわびしかりけり