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折々のつらさを何に嘆きけむ
やがて亡き世もあはれありけり

歌の意味
折々の相手のつれなさを、どうして嘆いたのだろう。そのまま相手が亡くなってしまった今になってみれば、その世にもしみじみとした情けがあったのだ。
鑑賞
巻第十 雑歌下 405

 生前の相手のつれなさを折々に嘆いていたが、相手が亡くなってしまった今になってみると、なぜあれほど嘆いたのかと思い返し、つらかった日々にも情けがあったと気づく一首である。失ってから知る相手への思いと悔いがこめられている。

 初句「折々の」は、その時々のという意を表す。
 二句「つらさを何に」は、相手のつれなさをいい、「何に」でどうしてという問いを表す。
 三句「嘆きけむ」は、過去推量の「けむ」で、どうして嘆いたのだろうという三句切れである。
 四句「やがて亡き世も」は、副詞「やがて」で、そのまま相手が亡くなった今の世もという意を表す。
 結句「あはれありけり」は、詠嘆の「けり」で、しみじみとした情けがあったのだと気づいて結ぶ。

をりをり:その時々
作者
よみ人しらず
出典
詞花和歌集
前の歌
涙のみ袂にかかる世の中に 身さへ朽ちぬることぞ悲しき
次の歌
人を問ふ鐘の声こそあはれなれ いつか我が身にならむとすらむ