石上ふるとも雨にさはらめや
逢はむと妹に言ひてしものを
- 歌の意味
-
雨が降ったとしても、雨に妨げられたりしようか。逢おうといとしい人に言ってしまったのだから。
- 鑑賞
-
巻第十二 恋歌二 765
詞書「題しらず」
たとえ雨が降っても雨に妨げられたりはしない、逢おうと恋人に約束してしまったのだからと詠む歌である。石上の地名の「布留」から雨が「降る」を導き、約束を守って雨の中でも逢いに行こうとする一途な心を表している。万葉集の巻四に、大伴像見の作として見える歌である。
作者の「大伴方見」は大伴像見とされる。奈良時代の官人で、万葉集に歌が収められている。
初句「石上」は、大和国の地名で、そこにある「布留」から、同じ音の二句「ふる」にかかる枕詞である。
二句「ふるとも雨に」は、「ふる」が地名の「布留」と、雨が「降る」を掛ける掛詞で、雨が降っても雨に、の意である。
三句「さはらめや」は、妨げられようか、いや妨げられない、の意で、「め」は推量の助動詞「む」の已然形、「や」は反語を表す。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「逢はむと妹に」は、逢おうといとしい人に、の意である。次歌の第七百六十六首の結句「逢はむとぞ思ふ」と、「逢はむ」の語を共有している。
結句「言ひてしものを」は、言ってしまったのだから、の意で、「て」は完了、「し」は過去の助動詞、「ものを」は詠嘆を込めた理由を表す。
いそのかみ:石上。大和国の地名。「布留」「古る」などにかかる枕詞
ふる:地名の「布留」と、雨が「降る」意を掛ける
さはる:障る。妨げられる
いも:妹。男性から恋しい女性を呼ぶ語
- 作者
-
大伴像見
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
人目をもつつまぬものと思ひせば 袖の涙のかからましやは
- 次の歌
-
わびぬれば今はた同じ難波なる みをつくしても逢はむとぞ思ふ