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夢をだにいかでかたみに見てしかな
逢はで寝る夜の慰めにせん

歌の意味
せめて夢だけでも、なんとかしてお互いに見たいものだ。逢わないで寝る夜の慰めにしよう。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 808

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 せめて夢だけでもお互いに見たい、それを逢えずに寝る夜の慰めにしようと詠む歌である。現実に逢えないもどかしさから、夢の中での逢瀬に望みを託し、思い出のよすがとしたいと願っている。
 作者の「ひとまろ」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。

 初句「夢をだに」は、せめて夢だけでも、の意で、「だに」は最小限の願望を表す副助詞である。
 二句「いかでかたみに」は、「かたみ」が「互みに(お互いに)」と、思い出のよすがの「形見」を掛ける掛詞である。「いかで」は、なんとかして、の意である。
 三句「見てしかな」は、見たいものだ、の意で、「てしかな」は自己の願望を表す。ここで句切れとなる。
 四句「逢はで寝る夜の」は、逢わないで寝る夜の、の意である。第八百十首の四句「今宵の夢を」とともに、夢を詠む歌が並んでいる。
 結句「慰めにせん」は、慰めにしよう、の意で、「ん」は意志を表す。第七百九十首の四句「慰めにても」と、慰めの語を共有している。

かたみ:「互みに(お互いに)」の意と、思い出のよすがの「形見」を掛ける
作者
柿本人麻呂
出典
拾遺和歌集
前の歌
夕占問ふ占にもよくあり今宵だに 来ざらむ君をいつか待つべき
次の歌
うつつには逢ふこと難し玉の緒の よるは絶えせず夢に見えなん