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しののめに鳴きこそ渡れ時鳥
物思ふ宿はしるくやあるらん

歌の意味
夜明け方に鳴きながら飛んでいくことだ、ほととぎすは。物思いをしている家は、はっきりとわかるのだろうか。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 821

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 夜明け方にほととぎすが鳴きながら飛んでいく、物思いに沈んでいる家ははっきりとわかるのだろうかと詠む歌である。眠れず夜を明かす自分の家の上をほととぎすがわざわざ鳴いて渡るように感じ、恋に悩む家がほととぎすにも見抜かれているのかと思いやっている。

 初句「しののめに」は、夜明け方に、の意である。
 二句「鳴きこそ渡れ」は、鳴きながら飛んでいく、の意で、係助詞「こそ」を受けて「渡れ」と已然形で結んでいる。ここで句切れとなる。
 三句「時鳥」は、ほととぎすで、倒置して二句の主語を示している。前歌の第八百二十首の三句「郭公」と、ほととぎすを共有している。
 四句「物思ふ宿は」は、物思いをしている家は、の意である。
 結句「しるくやあるらん」は、はっきりとわかるのだろうか、の意で、係助詞「や」を受けて現在推量の助動詞「らん」の連体形で結んでいる。前歌が待つ人とほととぎすの心を同じとするのに対し、この歌はほととぎすが物思う心を見抜くと詠み、二首が対をなしている。

しののめ:東雲。夜明け方
ものおもふ:物思ふ。思い悩む
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
来ぬ人をまつちの山の郭公 同じ心に音こそ泣かるれ
次の歌
叩くとて宿の妻戸を開けたれば 人もこずゑの水鶏なりけり