叩くとて宿の妻戸を開けたれば
人もこずゑの水鶏なりけり
- 歌の意味
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戸を叩く音がしたと思って家の妻戸を開けたところ、人は来ずに、梢の水鶏の鳴き声であったよ。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 822
詞書は前の歌に続き「題しらず」
戸を叩くと思って妻戸を開けたら、人は来ておらず、梢で鳴く水鶏の声だったと詠む歌である。戸を叩くように聞こえる水鶏の鳴き声を恋人の訪れと思い違えた落胆を、軽い機知をこめて詠んでいる。
初句「叩くとて」は、戸を叩くと思って、の意である。水鶏の鳴き声は戸を叩く音に似ているとされた。
二句「宿の妻戸を」は、家の妻戸を、の意である。
三句「開けたれば」は、開けたところ、の意で、「ば」は順接の確定条件を表す。
四句「人もこずゑの」は、「こずゑ」が人が「来ず」と、木の「梢」を掛ける掛詞である。前の第八百二十首の初句「来ぬ人を」と同じく、来ない人を詠んでいる。
結句「水鶏なりけり」は、水鶏であったよ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。前の第八百二十首と第八百二十一首のほととぎすに続き、夏の鳥を詠んでいる。
つまど:妻戸。寝殿造りの四隅にある両開きの板戸
こずゑ:人が「来ず」の意と、木の「梢」を掛ける
くひな:水鶏。夏の鳥。鳴き声が戸を叩く音に似るとされた
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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しののめに鳴きこそ渡れ時鳥 物思ふ宿はしるくやあるらん
- 次の歌
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夏衣薄きながらぞ頼まるる ひとへなるしも身に近ければ