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思ひやる心さへこそ苦しけれ
あらちの山の冬のけしきは

歌の意味
思いやるこちらの心までもが苦しいことだ。有乳山の冬の景色を思うと。
鑑賞
巻第九 雑歌上 597

 遠く思いやるこちらの心までもが苦しくなる、有乳山の冬の厳しい景色を思うと、と詠む歌である。前歌の第五百九十六首で、越路への旅を悔やんだ人に対し、雪深い有乳山の冬の厳しさを思いやって、その人の苦しさに心を寄せている。
 前歌の三句「あらち山」を四句「あらちの山」で受けて答えている。

 初句「思ひやる」は、遠く思いやるの意である。
 二句「心さへこそ」は、心までもがの意で、副助詞「さへ」が添加を表し、係助詞「こそ」が三句の「けれ」と係り結びをなしている。
 三句「苦しけれ」は、苦しいことだの意で、形容詞の已然形「苦しけれ」で二句の「こそ」を受けて結び、ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「あらちの山の」は、有乳山のの意で、前歌の第五百九十六首の三句「あらち山」を受けている。
 結句「冬のけしきは」は、冬の景色はの意で、三句以前に対して倒置の形で結んでいる。

あらちやま:越前国の歌枕、有乳山。近江から越前へ越える峠の山
作者
よみ人しらず
出典
金葉和歌集
前の歌
うち頼む人の心はあらち山 こしぢ悔しき旅にもあるかな
次の歌
いたづらに過ぐる月日を数ふれば 昔を偲ぶ音こそ泣かるれ