古典和歌stream

夏衣薄きながらぞ頼まるる
ひとへなるしも身に近ければ

歌の意味
夏衣のように薄い仲ではあるが、それでも頼みに思われる。一重であるのがかえって身に近いのだから。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 823

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 夏衣のように薄い縁ではあるが、それでも頼みに思われる、一重であることがかえって身に近いのだからと詠む歌である。薄く一重の夏衣が肌に近いことに、浅い仲ながらも心近く感じられる恋人への頼みを重ねている。

 初句「夏衣」は、夏に着る薄い衣である。前の第八百二十首から第八百二十二首の夏の鳥に続き、夏の景物を詠んでいる。
 二句「薄きながらぞ」は、薄いままでも、の意で、衣の薄さに二人の縁の薄さを重ねている。
 三句「頼まるる」は、頼みに思われる、の意で、係助詞「ぞ」を受けて自発の助動詞「る」の連体形「るる」で結んでいる。ここで句切れとなる。
 四句「ひとへなるしも」は、一重であるのがかえって、の意で、「しも」は強意の副助詞である。
 結句「身に近ければ」は、身に近いのだから、の意で、倒置して三句の理由を示している。第七百九十八首が衣の隔てを厭うのに対し、この歌は薄い衣が身に近いことを頼みとし、衣をめぐる趣向が反転している。

なつごろも:夏衣。夏に着る薄い衣
ひとへ:一重。裏のない衣
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
叩くとて宿の妻戸を開けたれば 人もこずゑの水鶏なりけり
次の歌
刈りて干す淀の真菰の雨降れば つかねもあへぬ恋もするかな