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木綿だすきかけても言ふな
あだ人のあふひてふ名は禊にぞせし

歌の意味
木綿だすきを掛けるように、かりそめにも口にしないでおくれ。浮気な人の言う「逢ふ日」という名は、禊をして流し去ってしまった。
鑑賞
巻第四 夏歌 162

詞書「返し」
 前歌で葵の「逢ふ日」という名を頼みにすると言い寄った男に対し、かりそめにもそんなことは言わないで、浮気な人の言う逢う日の名は禊で流してしまったと返した歌である。祭にちなむ禊を持ち出し、相手の言葉をきっぱりと退けている。
 前歌の第百六十一首と贈答をなす。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「木綿だすき」は、神事の際に掛ける木綿のたすきで、「かけ」を導く枕詞である。賀茂祭の神事にふさわしい語を選んでいる。
 二句「かけても言ふな」の「かけても」は、かりそめにも、の意で、前歌の「かけてぞ頼む」を受けている。「な」は禁止を表し、ここで句切れとなる。
 三句「あだ人の」は、浮気な人の、の意で、言い寄ってきた男を指している。
 四句「あふひてふ名は」の「あふひ」は、「葵」と「逢ふ日」を掛けた掛詞で、前歌の結句「あふひてふ名を」をそのまま受けている。
 結句「禊にぞせし」は、禊にしてしまった、禊で流し去った、の意で、「ぞ」は係助詞、過去の助動詞「き」の連体形「し」と係り結びをなす。

あふひ:賀茂祭に飾る「葵」と、「逢ふ日」を掛ける
ゆふだすき:神事の際に掛ける、楮の繊維で作った木綿のたすき
あだびと:浮気な人、誠実でない人
みそぎ:川などで身を清め、罪やけがれを流すこと
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
行きかへる八十氏人の玉かづら かけてぞ頼むあふひてふ名を
次の歌
この頃は五月雨近み郭公 思ひ乱れて鳴かぬ日ぞなき