古典和歌stream

いづかたにゆき隠れなん世の中に
身のあればこそ人もつらけれ

歌の意味
どこへ行って隠れてしまおうか。この世の中にわが身があるからこそ、あの人もつれなく思われるのだ。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 1365

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 つらさと忘却を詠む一連の四首目である。この世に身があるからこそ相手のつれなさも身にしみるのだと、どこかへ隠れてしまいたいと願う。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「読人しらず」は、名の伝わらない作者であることを示す。

 初句「いづかたに」は、どの方角へ、の意である。
 二句「ゆき隠れなん」の「なん」は、完了の「ぬ」の未然形に意志の「む」が付いた形で、行って隠れてしまおうか、の意である。二句で切れる。
 三句「世の中に」は、この世に、の意で、男女の仲の意も含む。
 四句「身のあればこそ」は、わが身があるからこそ、の意で、係助詞「こそ」が結句に係る。
 結句「人もつらけれ」は、係助詞「こそ」を受けて已然形「つらけれ」で結ぶ係り結びである。前歌が命の長さを嘆いたのを受け、その身がこの世にあること自体を苦しみの原因と見ている。

ゆきかくる:行って姿を隠す
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
前の歌
命をばあだなるものと聞きしかど つらきがためは長くもあるかな
次の歌
今までに忘れぬ人は世にもあらじ おのがさまざま年の経ぬれば