今までに忘れぬ人は世にもあらじ
おのがさまざま年の経ぬれば
- 歌の意味
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今まで忘れずにいる人など、世の中にいはしないだろう。それぞれ別々の道を歩んで、長い年月がたったのだから。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 1366
詞書は前の歌に続き「題しらず」
つらさと忘却を詠む一連の五首目である。それぞれ別々に年月を重ねたのだから、今まで忘れずにいる人などいまいと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「読人しらず」は、名の伝わらない作者であることを示す。
この歌は『伊勢物語』第八十六段に見える。そこでは、若い男女が親に遠慮して恋を遂げずに別れ、年を経てから男がこの歌を女に贈ったとされる。
初句「今までに」は、今に至るまで、の意である。
二句「忘れぬ人は」は、忘れずにいる人は、の意である。前歌までの「忘る」をめぐる嘆きを受けている。
三句「世にもあらじ」の「じ」は打消の推量で、世の中にいないだろう、の意である。三句で切れる。
四句「おのがさまざま」は、それぞれ思い思いに、の意で、二人が別々の人生を歩んだことをいう。
結句「年の経ぬれば」は、年月がたってしまったので、の意である。三句からの倒置で、忘れるのも無理はないという理由を後に置く。本巻の第千三百六十三首がどうしても忘れられないと詠んだのに対し、この歌は年月が人を忘れさせると言い、忘れられない思いの裏側を示している。
おのがさまざま:それぞれ思い思いに、別々に
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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いづかたにゆき隠れなん世の中に 身のあればこそ人もつらけれ
- 次の歌
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玉水を手にむすびても試みん ぬるくは石のなかも頼まじ