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人目ゆゑ後にあふひのはるけくは
わがつらきにや思ひなされむ

歌の意味
人目をはばかるせいで、この後に逢う日が遠のいてしまうなら、私が薄情なためだと思われてしまうだろうか。
鑑賞
巻第十 物名 434

詞書は前の歌に続き「葵、桂」
 人目をはばかるせいで後に逢う日が遠のいてしまうなら、私が薄情なためだと思われてしまうだろうか、と詠む歌である。前歌と同じく「あふひ」に葵を、四句の「わがつらき」に桂を詠み込んでいる。前歌がまれにしか逢えない相手を恨む側の歌であるのに対し、こちらは逢いたくても人目のために逢えない側の案じる心を詠み、同じ題を裏表から詠み分けた対になっている。
 作者は「よみ人しらず」で、名は伝わらない。

 初句「人目ゆゑ」は、人目があるために、の意で、逢えない理由を示す。
 二句「後にあふひの」は「後に逢ふ日の」で、「あふひ」に題の「葵」を掛けている。前歌の二句「あふひのまれに」と同じ語を用いて対応させる。
 三句「はるけくは」は、遠く隔たるならば、の意の仮定表現である。
 四句「わがつらきにや」は、私が薄情なためだと、の意で、「わがつらき」の中に題の「かつら」が隠されている。「や」は疑問の係助詞である。
 結句「思ひなされむ」は「や」を受けて連体形「む」で結び、そう思われてしまうだろうか、と案じる。

あふひ:「逢ふ日」の意と、植物の「葵」を掛ける
かつら:「わがつらき」の中に詠み込まれた題で、木の「桂」をいう
おもひなす:そうだと思い込む、決めてかかる
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
かくばかりあふひのまれになる人を いかがつらしと思はざるべき
次の歌
散りぬれば後はあくたになる花を 思ひ知らずもまどふてふかな