かくばかりあふひのまれになる人を
いかがつらしと思はざるべき
- 歌の意味
-
これほどまでに逢う日がまれになってしまった人を、どうしてつらいと思わずにいられようか。
- 鑑賞
-
巻第十 物名 433
詞書「葵、桂」
これほど逢う日がまれになってしまった人を、どうしてつらいと思わずにいられようか、と詠む歌である。二句の「あふひ(逢ふ日)」に題の「葵」を、四句の「いかがつらし」に題の「桂」を詠み込み、二つの題を一首に収めている。葵と桂は賀茂祭で飾りに用いる取り合わせで、その縁で並べた題と考えられる。次歌の第四百三十四首も同じ題で、逢えない嘆きを訴える側に対し、逢わずにいる側の立場から詠む対の構成となっている。
作者は「よみ人しらず」で、名は伝わらない。
初句「かくばかり」は、これほどまでに、の意で、逢瀬の少なさを強調する。
二句「あふひのまれに」は「逢ふ日の稀に」で、逢う日が少なくなることをいう。「あふひ」は「逢ふ日」と題の「葵」を掛けている。
三句「なる人を」は、そうなってしまった相手を、の意である。
四句「いかがつらしと」の「いかが」は反語で、「いかがつらし」の中に題の「かつら」が隠されている。
結句「思はざるべき」は四句の「いかが」を受け、つらいと思わずにいられようか、いや思わずにはいられない、と結ぶ。
あふひ:「逢ふ日」の意と、植物の「葵」を掛ける
かつら:「いかがつらし」の中に詠み込まれた題で、木の「桂」をいう
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
秋は来ぬ今やまがきのきりぎりす 夜な夜な鳴かむ風の寒さに
- 次の歌
-
人目ゆゑ後にあふひのはるけくは わがつらきにや思ひなされむ