散りぬれば後はあくたになる花を
思ひ知らずもまどふてふかな
- 歌の意味
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散ってしまえば後は塵芥になってしまう花なのに、それを思い知ることもなく、心乱れて飛び回る蝶であることよ。
- 鑑賞
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巻第十 物名 435
詞書「くたに」
散ってしまえば後は塵芥となる花なのに、それを思い知らずに花のまわりを迷い飛ぶ蝶だなあ、と詠む歌である。二句の「あくたになる」に題の「くたに」を詠み込んでいる。くたには植物の名とされるが、竜胆とも牡丹ともいわれ、定説を見ない。はかない花に執着する蝶の姿を描き、僧である作者らしい無常の観照がうかがえる。
作者の「僧正へんせう」は遍昭である。俗名を良岑宗貞といい、桓武天皇の孫にあたる。仁明天皇の崩御を機に出家し、のちに僧正となった。六歌仙の一人である。
初句「散りぬれば」は、散ってしまうと、の意で、「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形である。
二句「後はあくたに」は、後には塵やごみに、の意で、「あくたに」の中に題の「くたに」が隠されている。
三句「なる花を」の「を」は逆接的に働き、そうなる花であるのに、の意を含む。
四句「思ひ知らずも」は、それを悟ることもなく、の意である。
結句「まどふてふかな」は「惑ふ蝶かな」で、心乱れて飛び回る蝶だなあ、と詠嘆する。「てふ」は蝶の古い仮名表記である。
あくた:ごみ、塵
くたに:植物の名とされるが、竜胆とも牡丹ともいわれ未詳、「あくたになる」の中に詠み込まれる
まどふ:心が乱れて迷う、うろたえる
てふ:蝶
- 作者
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遍昭
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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人目ゆゑ後にあふひのはるけくは わがつらきにや思ひなされむ
- 次の歌
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我はけさうひにぞ見つる花の色を あだなるものといふべかりけり