世の人の及ばぬものは富士の嶺の
雲居に高きおもひなりけり
- 歌の意味
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世の人の誰も及ばないものは、富士の嶺が雲の上に高くそびえて火を燃やしているように、宮中にいる私の高く燃える思いであることよ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 891
詞書「富士の山の形を作らせ給ひて、藤壺の御方へ遣はす」
世の人の誰も及ばないものは、雲の上にそびえる富士の嶺の火のように高く燃える私の思いであると詠む歌である。帝が自らの恋心を、日本一の高山である富士と、そこに燃える火にたとえ、思いの高さと激しさを堂々と示している。
詞書によれば、富士山の模型を作らせて、藤壺に住む后妃のもとへ贈った際の歌である。贈り物の富士の山に、恋の思いを託している。
作者の「天暦御製」は村上天皇である。醍醐天皇の皇子で、その治世は天暦の治と称えられた。後撰和歌集の撰進を命じ、天徳四年の内裏歌合を催した。
初句「世の人の」は、世の中の人の、の意である。
二句「及ばぬものは」は、及ばないものは、の意である。
三句「富士の嶺の」は、富士山の頂の、の意である。富士は当時噴煙を上げる山として詠まれた。次歌の第八百九十二首の「都の富士」と、富士を詠む二首が並んでいる。
四句「雲居に高き」は、雲の上に高い、の意で、「雲居」は宮中の意も含み、帝の思いの高さを表している。本巻の第九百九首、第九百十首の「雲居」と、遠く高いところを詠む言葉を共有している。
結句「おもひなりけり」は、思いであることよ、の意で、「おもひ」の「ひ」に、富士の嶺に燃える「火」を掛けた掛詞である。「けり」は詠嘆を表す。
くもゐ:雲居。雲のある高い所。宮中
おもひ:「思ひ」と、富士の嶺に燃える「火」を掛ける
ふぢつぼ:藤壺。宮中の飛香舎の別名。そこに住む后妃
- 作者
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村上天皇
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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さしながら人の心をみくまのの 浦の浜木綿いくへなるらん
- 次の歌
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我が恋のあらはに見ゆるものならば 都の富士と言はれなましを