岩根踏み重なる山はなけれども
逢はぬ日数を恋ひや渡らん
- 歌の意味
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岩根を踏んで越えていくような重なり合う山が、二人の間にあるわけではないけれども、逢えない日々を恋い続けて過ごすのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 969
詞書は前の歌に続き「題しらず」
岩根を踏み越えなければならないような重なる山が隔てているわけでもないのに、逢えない日々を恋い続けて過ごすのだろうか、と詠む歌である。遠く離れているわけでもないのに逢えない恋人を、恋い慕いながら日を重ねるもどかしさを詠んでいる。
坂上郎女の作とされる四首の最後の歌である。
作者の「坂上郎女」は、大伴安麻呂の娘で、大伴旅人の異母妹にあたる。万葉集を代表する女性歌人で、大伴家持の叔母であり、娘の坂上大嬢を家持に嫁がせて姑ともなった。
万葉集巻十一に、下の句を「逢はぬ日まねみ恋ひわたるかも」とする類歌があり、伊勢物語第七十四段にも類歌が見える。
初句「岩根踏み」は、大地に根を張ったような大きな岩を踏んで、の意で、険しい山道を越えるさまをいう。
二句「重なる山は」は、重なり合う山は、の意である。
三句「なけれども」は、ないけれども、の意で、二人を隔てるものはないのに、という逆接を表す。
四句「逢はぬ日数を」は、逢えない日々を、の意である。本巻の第九百六十七首の「見らく少なく」、第九百六十八首の「見るよしもがな」と、逢うことのまれな嘆きを共有し、坂上郎女の歌の一連をまとめている。
結句「恋ひや渡らん」は、恋い続けて過ごすのだろうか、の意で、係助詞「や」を受けて、推量の助動詞「らん」の連体形で結んでいる。
いはね:岩根。大地に根を張ったような大きな岩
こひわたる:恋ひ渡る。恋い続けて月日を過ごす
- 作者
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大伴坂上郎女
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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志賀の海人の釣りにともせる漁り火の ほのかに人を見るよしもがな
- 次の歌
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なげきこる山路は人も知らなくに 我が心のみ常に行くらん