つらけれど人には言はずいはみ潟
うらみぞ深き心ひとつに
- 歌の意味
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つれないけれども、人には言わずにいる。石見潟の浦のように、恨みは深い、私の心ひとつのうちに。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 980
詞書は前の歌に続き「題しらず」
つれないけれども人には言わずにいる、石見潟の浦のように恨みは深い、我が心ひとつのうちに、と詠む歌である。誰にも打ち明けることなく、ひとり胸の内に深い恨みを抱え込む恋の苦しみを、地名に掛けて詠んでいる。
初句「つらけれど」は、つれないけれども、の意である。本巻の第九百七十四首の初句「つらけれど」と、同じ句で歌い起こしている。
二句「人には言はず」は、人には言わない、の意で、ここで句切れとなる。
三句「いはみ潟」は、石見国の歌枕、石見潟の、の意で、「いはみ」は二句の「言はず」の「言は」を受け、地名の「石見」に掛けた掛詞である。
四句「うらみぞ深き」は、恨みが深い、の意で、「うらみ」は潟の縁で「浦見」に「恨み」を掛けた掛詞である。係助詞「ぞ」を受けて形容詞「深し」の連体形で結んでいる。ここで句切れとなる。
結句「心ひとつに」は、我が心ひとつのうちに、の意で、四句と倒置になっている。本巻の第九百五十三首の「我が身ひとつの」、第九百九十九首の「我が身ひとつに」と、ひとりで抱え込む思いを詠む点が通じている。
いはみ:「言はず」の「言は」と、石見国の「石見潟」を掛ける
うらみ:潟の縁で「浦見」と「恨み」を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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有磯海のうらと頼めしなごり波 うち寄せてける忘れ貝かな
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怨みぬも疑はしくぞおもほゆる 頼む心のなきかと思へば