有磯海のうらと頼めしなごり波
うち寄せてける忘れ貝かな
- 歌の意味
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有磯海の浦のように、心の底から頼みにさせたあの人の名残の波が、打ち寄せてきたのは、恋を忘れさせるという忘れ貝であったよ。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 979
詞書は前の歌に続き「題しらず」
有磯海の浦のように心から頼みにさせた名残の波が打ち寄せてきたのは、恋を忘れさせる忘れ貝であった、と詠む歌である。かつては心から頼りにさせてくれた恋人が、名残に残していったのは忘れ去ることだけであったという嘆きを、浜辺の景物に託して詠んでいる。
初句「有磯海の」は、越中国の歌枕、有磯海の、の意で、六音の字余りである。
二句「うらと頼めし」は、心の底からと頼みにさせた、の意で、「うら」は海辺の「浦」に、心の意の「うら」を掛けた掛詞である。「頼め」は下二段活用で、頼みにさせる、の意である。
三句「なごり波」は、風がやんだ後もしばらく立っている波、の意で、恋人が去った後の名残をも響かせている。
四句「うち寄せてける」は、打ち寄せてきた、の意である。
結句「忘れ貝かな」は、忘れ貝であることよ、の意で、忘れ貝は拾うと恋の苦しみを忘れるとされた貝である。本巻の第九百五十一首の「忘れず」、第九百八十六首の「名を忘れつつ」と、「忘る」の語を共有している。
うら:「浦」と、心の意の「うら」を掛ける
なごりなみ:名残波。風がやんだ後もしばらく立っている波
わすれがひ:忘れ貝。拾うと恋の苦しみを忘れるとされた貝
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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拾遺和歌集
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限りなく思ひそめてし紅の 人をあくにぞかへらざりける
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つらけれど人には言はずいはみ潟 うらみぞ深き心ひとつに