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限りなく思ひそめてし紅の
人をあくにぞかへらざりける

歌の意味
限りなく深く思い初め、紅に深く染めたあの人への思いは、灰汁にも色が変わらないように、飽きる心には変わらなかったのだ。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 978

詞書「題しらず」
 限りなく深く思い初めた紅のような恋は、灰汁によって色が変わらないように、相手に飽きる心へと変わることはなかった、と詠む歌である。紅染めの色が灰汁にも褪せないことに、どんなことがあっても変わらない恋心をたとえている。
 前歌の第九百七十六首、第九百七十七首から続く「あく」を詠む三首の最後の歌で、ここでは「飽く」を否定し、変わらない心を詠んでいる。

 初句「限りなく」は、限りなく、の意である。本巻の第九百四十二首の初句「限りなく」と同じ句で、第九百七十一首の初句「限りなき」とも呼応している。
 二句「思ひそめてし」は、思い初めた、の意で、「そめ」は「初め」に、紅に「染め」る意を掛けた掛詞である。本巻の第九百七十五首の四句「思ひそめずぞ」と、同じ掛詞を共有している。
 三句「紅の」は、紅色の、の意で、二句の「染め」と縁語をなしている。本巻の第九百七十五首の初句「紅の」と、同じ語を共有している。
 四句「人をあくにぞ」は、あの人を飽く心に、の意で、「あく」は「飽く」に、紅染めに用いる「灰汁」を掛けた掛詞である。前歌の第九百七十六首の「あく」、第九百七十七首の「あくた河」と、同じ趣向を共有している。係助詞「ぞ」が結句と係り結びをなしている。
 結句「かへらざりける」は、変わらなかったのだ、の意で、「かへる」は色が褪せて変わる意である。詠嘆の助動詞「けり」の連体形「ける」で四句の「ぞ」を受けて結んでいる。

そむ:「思ひ初む」と、紅に「染む」を掛ける
あく:「飽く」と、染色に用いる「灰汁」を掛ける
かへる:返る。色があせて変わる
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
人をとくあくた河てふ津の国の なにはたがはぬものにぞありける
次の歌
有磯海のうらと頼めしなごり波 うち寄せてける忘れ貝かな