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夏衣身にはなるともわがために
薄き心はかけずもあらなん

歌の意味
夏衣が身になじむように、私と馴れ親しんだとしても、夏衣の薄さのような薄い心を、私に対しては掛けないでいてほしい。
鑑賞
巻第十四 恋歌六 1019

詞書「題しらず」
 夏衣が身に馴れるように親しんだとしても、私に対しては夏衣のような薄い心を掛けないでほしい、と詠んだ歌である。薄い夏衣を身に掛けることに、馴れ親しむにつれて薄らぐ心を重ね、相手の心変わりを先回りして戒めている。
 本巻の第千五十四首も夏衣の薄さを詠み、贈った夏の装束に寄せて心の薄さを嘆いており、夏衣に寄せた二首が巻の前半と後半に置かれている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「夏衣」は、夏に着る薄い衣、の意で、薄さから四句の「薄き心」を導いている。本巻の第千五十四首の三句と同じ語である。
 二句「身にはなるとも」は、身には馴れたとしても、の意で、「なる」に衣が身になじむ意と、人に馴れ親しむ意を掛けている。
 三句「わがために」は、私に対しては、の意である。
 四句「薄き心は」は、薄い心は、の意で、夏衣の薄さに心の浅さを重ねている。
 結句「かけずもあらなん」は、掛けないでいてほしい、の意で、「かけ」に衣を掛ける意と心を掛ける意を重ね、夏衣の縁語としている。「なん」は他にあつらえ望む終助詞である。

なる:衣が身になじむ意と、人に馴れ親しむ意を掛ける
かく:衣を掛ける意と、心を掛ける意を重ねる
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
あふはかりなくてのみふるわが恋を 人目にかくることのわびしさ
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いかにして事語らはん郭公 なげきの下になけばかひなし