かくばかり憂しと思ふに恋しきは
我さへ心ふたつありけり
- 歌の意味
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これほどつらいと思うのに、それでも恋しいのは、あの人だけでなく、私までも心が二つあったのだ。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 989
詞書は前の歌に続き「題しらず」
これほどつらいと思うのに恋しいのは、私までも心が二つあったのだ、と詠む歌である。相手をつらいと思う心と恋しいと思う心が同時に存在することを、相手の二心になぞらえて「我さへ」と詠み、自分の心の矛盾を見つめている。
次歌の第九百九十首が「ただ一筋に」と一途な心を詠むのに対し、本歌は「心ふたつ」と分裂した心を詠み、二首で対照をなしている。
初句「かくばかり」は、これほどまでに、の意である。
二句「憂しと思ふに」は、つらいと思うのに、の意である。本巻の第九百四十四首の初句「憂しと思ふ」と、同じ語句を共有している。
三句「恋しきは」は、恋しいのは、の意である。本巻の第九百四十四首、第九百四十六首の三句「恋しきは」と同じ句である。
四句「我さへ心」は、私までも心が、の意で、「さへ」は添加を表し、相手だけでなく自分も、の意を込めている。
結句「ふたつありけり」は、二つあったのだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。本巻の第九百四十六首の結句「心なりけり」と、自分の心のままならなさを詠む点が通じている。
おもふ:思ふ。ここでは、感じる、心に抱く
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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恋ひわびぬ悲しきことも慰めん いづれなかすの浜辺なるらん
- 次の歌
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とにかくに物は思はず飛騨工 打つ墨縄のただ一筋に