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ただちとも頼まざらなん身に近き
衣の関もありといふなり

歌の意味
すぐに逢える近道だなどと頼みにしないでほしい。身に近い衣にさえ、衣の関という関所があるというのだから。
鑑賞
巻第十六 雑歌二 1160

詞書「題しらず」
 すぐ逢える近道だと頼みにしないでほしい、身に近い衣にも衣の関があるというのだから、と詠んだ歌である。陸奥の歌枕である衣の関の名を、身にまとう衣に重ね、どれほど近い間柄でも隔てはあるものだと、たやすく逢えると思う相手をたしなめている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「ただちとも」は、まっすぐな近道だとも、の意で、「ただち」は直接に通じる道をいう。
 二句「頼まざらなん」は、頼みにしないでほしい、の意で、「なん」は他にあつらえ望む終助詞である。ここで句切れとなる。
 三句「身に近き」は、身に近い、の意で、肌に触れる衣をいう。
 四句「衣の関も」は、衣の関も、の意で、陸奥国の歌枕「衣の関」に、身にまとう衣を重ねている。
 結句「ありといふなり」は、あるというのだ、の意で、「なり」は伝聞の助動詞である。

ただち:まっすぐ通じる道。近道
ころものせき:陸奥国の歌枕。衣川のほとりにあったという関
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
取りもあへず立ち騒がれしあだ浪に あやなく何に袖の濡れけん
次の歌
逢はぬ間に恋しき道も知りにしを などうれしきに迷ふ心ぞ