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むばたまの闇のうつつはさだかなる
夢にいくらもまさらざりけり

歌の意味
真っ暗な闇の中での現実の逢瀬は、はっきりと見る夢と比べて、少しもまさってはいなかった。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 647

詞書「題しらず」
 暗闇の中で実際に逢った逢瀬は、はっきりと見た夢に比べて、いくらもまさっていなかったと詠む歌である。現実の逢瀬のはかなさを、夢の確かさと逆転させて表し、逢っても満たされない恋の心を捉えている。
 作者は「よみ人しらず」とあり、名は伝わっていない。
 前の二首の「夢かうつつか」「夢うつつとは」を受け、夢と現実を比べる歌が続く配列である。
 なお本文の初句は「むばたまの」とあり、読み仮名の行の「うはたまの」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。

 初句「むばたまの」は、「闇」にかかる枕詞である。「ぬばたまの」「うばたまの」とも言う。
 二句「闇のうつつは」は、暗闇の中の現実の逢瀬は、の意である。
 三句「さだかなる」は、はっきりとした、の意で、下の「夢」を修飾し、「闇」と対比させる。
 四句「夢にいくらも」は、夢に比べていくらも、の意で、打消と呼応して、少しも、の意になる。
 結句「まさらざりけり」は、まさっていなかったことだ、の意で、詠嘆の「けり」で気付きを表して結ぶ。

むばたま:ヒオウギの黒い実、闇や夜にかかる枕詞
うつつ:現実
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
かきくらす心の闇に惑ひにき 夢うつつとは世人定めよ
次の歌
さ夜ふけて天の門渡る月影に 飽かずも君をあひ見つるかな