取りもあへず立ち騒がれしあだ浪に
あやなく何に袖の濡れけん
- 歌の意味
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取るものも取りあえず騒がれて立ち去った、かりそめの波のようなことで、わけもなく、どうして袖が濡れたのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌二 1159
詞書「返し」
取るものも取りあえず騒がれて立ち去った、あだ波のようなことに、わけもなくどうして袖が濡れたのか、と詠んだ歌である。前歌の波と袖の縁を受け、あわてて帰っていった男の涙をあだ波のせいだと受け流し、本気の涙なのかと切り返している。
前歌の男の歌に対する女の返しである。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「取りもあへず」は、取るものも取りあえず、の意で、字余りとなっている。あわてて帰った男の様子をいう。
二句「立ち騒がれし」は、騒ぎ立てられた、の意で、前歌の二句「うち騒がれて」を受けている。本巻の第千百四十八首の初句にも「立ち騒ぐ」とある。
三句「あだ浪に」は、かりそめの波に、の意で、「あだ」に浮ついた不誠実さを響かせ、男の心をほのめかしている。
四句「あやなく何に」は、わけもなく、どうして、の意である。
結句「袖の濡れけん」は、袖が濡れたのだろうか、の意で、「けん」は過去の原因推量の助動詞である。前歌の結句「袖は濡れにし」に応じている。
あだなみ:むやみに立ち騒ぐ波。浮ついた心のたとえ
あやなし:わけがわからない。筋が通らない
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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白浪のうち騒がれて立ちしかば 身をうしほにぞ袖は濡れにし
- 次の歌
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ただちとも頼まざらなん身に近き 衣の関もありといふなり