白浪のうち騒がれて立ちしかば
身をうしほにぞ袖は濡れにし
- 歌の意味
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白波が騒ぐように人々に騒がれて立ち去ったので、我が身をつらいと思う涙の潮に、袖は濡れてしまった。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌二 1158
詞書「男の物言ひけるを騒ぎければ、帰りてあしたにつかはしける」
白波のように騒がれて立ち去ったので、我が身を憂く思う涙の潮で袖が濡れてしまった、と詠んだ歌である。女のもとで語らっていたところを騒がれて帰らざるを得なかった男が、白波と潮の縁語を連ねて、無念の涙を訴えている。
詞書によれば、男が女と話をしていたのを周りの人が騒ぎ立てたので、帰って翌朝に送った歌である。次歌に女の返しがあり、贈答となっている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「白浪の」は、白波のように、の意で、本巻の第千百五十四首にも「白浪」が詠まれている。
二句「うち騒がれて」は、騒ぎ立てられて、の意で、「れ」は受身の助動詞である。白波の騒ぐさまに人々の騒ぎを重ねている。
三句「立ちしかば」は、立ち去ったので、の意で、「立ち」に波が立つ意を重ねている。
四句「身をうしほにぞ」は、我が身を憂く思う潮に、の意で、「うしほ」に「憂し」と「潮」を掛けている。「ぞ」は強意の係助詞で、結句の連体形「し」で結ぶ係り結びとなっている。
結句「袖は濡れにし」は、袖は濡れてしまった、の意で、涙に濡れたことを潮に濡れたとして、波の縁語でまとめている。
うしほ:つらい意の「憂し」と、潮を掛ける
たつ:立ち去る意と、波が立つ意を重ねる
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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玉垂れの編み目の間より吹く風の 寒くはそへて入れん思ひを
- 次の歌
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取りもあへず立ち騒がれしあだ浪に あやなく何に袖の濡れけん