流れてもすすぎやするとぬれ衣
人は着すとも身には馴らさじ
- 歌の意味
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時が流れるうちに洗い清められることもあるかと思うので、濡れ衣を人が着せようとも、我が身に馴染ませることはするまい。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 696
詞書「返し」
前歌への女の返しである。流れていくうちにすすがれることもあるかと、濡れ衣は人が着せようとも身には馴らすまい、と詠む。前歌の「重ねてしほれ」という誘いを受け流し、無実の噂もいつかは川の流れにすすがれて晴れるかもしれないので、着せられた濡れ衣を我が身になじませることはしない、つまりあなたとは本当の仲にはならないと、きっぱりと拒んでいる。作者は「よみ人しらず」とされる。
前歌の第六百九十五首との贈答で、前歌の三句「ぬれ衣」を同じ三句で受け、「干す」に対して「すすぐ」と、衣の縁語で切り返している。
初句「流れても」は、川の水に流れても、の意で、時が流れることを重ねる。
二句「すすぎやすると」の「すすぎ」は水で洗い清める意で、噂が晴れる意を重ねる。「や」は疑問である。前歌の四句「干すべき」に対し、衣の縁語で応じる。
三句「ぬれ衣」は、濡れた衣と無実の噂の意を掛ける。前歌の三句と同じ語である。
四句「人は着すとも」の「着す」は着せる意、「とも」は逆接仮定で、人が着せようとも、の意である。
結句「身には馴らさじ」の「馴らさ」は着馴らす意、「じ」は打消し意志で、我が身に着馴らすことはするまい、の意である。本当の仲にはならないことを表す。
すすぐ:水で洗い清める。汚名を晴らす意を重ねる
ぬれぎぬ:濡れた衣の意と、無実の罪や噂の意を掛ける
きす:着せる
ならす:着馴らす、なじませる
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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同じくは重ねてしほれぬれ衣 さても干すべきなき名ならじを
- 次の歌
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人目をば包むと思ふにせきかねて 袖にあまるは涙なりけり