同じくは重ねてしほれぬれ衣
さても干すべきなき名ならじを
- 歌の意味
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同じことならば、いっそ重ねてぐっしょり濡れてしまえ、この濡れ衣よ。そのままにしておいても乾かせるような、根も葉もない噂ではないだろうから。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 695
詞書「女のなき名立つよし恨みて侍りければ、遣はしける」
女が、二人の間に根も葉もない噂が立ったと恨んできたので、贈った歌である。同じことなら重ねて濡れてしまえ、濡れ衣よ、どうせ乾かせるような無き名ではないだろうに、と詠む。無実の噂を「濡れ衣」にたとえ、どうせ噂を晴らすことができないのなら、いっそ本当の仲となって濡れ衣を重ねてしまおうと、女の恨み言を逆手にとって言い寄っている。
作者の「左兵衛督隆房」は藤原隆房である。権大納言藤原隆季の子で、平清盛の娘を妻とした。左兵衛督などを務めた。
次歌の第六百九十六首はこの歌への女の返しで、二首が贈答をなす。また本巻の第六百五十九首も「なき名」をめぐる歌である。
初句「同じくは」は、どうせ同じことならば、の意である。
二句「重ねてしほれ」の「しほれ」は、水にぐっしょり濡れる意の「しほる」の命令形で、重ねて濡れよ、の意である。
三句「ぬれ衣」は、濡れた衣の意と、無実の罪や根も葉もない噂の意を掛ける。ここで句切れとなる。次歌の三句と同じ語である。
四句「さても干すべき」は、そのままでも乾かせるはずの、の意で、「干す」は濡れ衣の縁語として、噂を晴らす意を重ねる。
結句「なき名ならじを」の「なき名」は根も葉もない噂、「じ」は打消し推量、「を」は詠嘆で、無き名ではあるまいに、の意である。第六百五十九首の四句「なき名や」と同じ語である。
しほる:水にぐっしょり濡れる
ぬれぎぬ:濡れた衣の意と、無実の罪や噂の意を掛ける
ほす:乾かす。噂を晴らす意を重ねる
なきな:根も葉もない噂、浮き名
- 作者
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藤原隆房
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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忍び音の袂は色に出でにけり 心にも似ぬ我が涙かな
- 次の歌
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流れてもすすぎやするとぬれ衣 人は着すとも身には馴らさじ