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草枕仮寝の夢に幾たびか
慣れし都に行き帰るらん

歌の意味
草枕の仮寝の夢の中で、いく度、住み慣れた都へ行っては帰ってくるのだろうか。
鑑賞
巻第八 羈旅歌 534

詞書は前の歌に続き「旅の歌とてよみ侍りける」
 前歌に続き、旅の題で詠んだ歌である。草枕の仮寝の夢の中で、いく度、住み慣れた都へ行っては帰ってくるのだろうか、と詠む。旅の身は遠く離れていても、夢の中では何度も都へ通っているという、都への思いの深さを表している。
 作者の「左兵衛督隆房」は藤原隆房である。権大納言藤原隆季の子で、平清盛の娘を妻とした。左兵衛督を経て、のちに大納言に至った。

 初句「草枕」は旅寝の意で、二句の「仮寝」にかかる。
 二句「仮寝の夢に」の「仮寝」は旅先での仮の眠りで、前歌の第五百三十三首の夢の趣向を受ける。
 三句「幾たびか」の「か」は疑問の係助詞で、結句の「らん」と連体形で結ぶ。
 四句「慣れし都に」の「慣れ」は住み慣れる意、「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、住み慣れた都に、の意である。
 結句「行き帰るらん」の「らん」は現在推量の助動詞で、夢の中で何度都へ行き来しているのだろうか、の意である。

かりね:旅先での仮の眠り
なる:慣れる、なじむ
作者
藤原隆房
出典
千載和歌集
前の歌
旅の世にまた旅寝して草枕 夢のうちにも夢を見るかな
次の歌
いつもかく有明の月の明け方は 物や悲しき須磨の関守