恋ひ死なば浮かれん魂よしばしだに
我が思ふ人のつまにとどまれ
- 歌の意味
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恋い焦がれて死んだならば、身を離れてさまよい出ていく私の魂よ、せめてしばらくの間だけでも、私の思う人の衣の褄にとどまっていておくれ。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 923
詞書「題しらず」
恋い死にしたならばさまよい出る魂よ、せめてしばらくでも私の思う人の褄にとどまれ、と詠む。思いが極まると魂が身を離れてさまようという考えを踏まえ、死後に体を離れる自分の魂に呼びかけて、せめて恋しい人の着物の褄にとどまってそばにいてほしいと願っている。死んでもなお恋しい人から離れまいとする激しい執着を詠んだ一首である。
作者の「左兵衛督隆房」は藤原隆房である。権大納言藤原隆季の子で、左兵衛督を務め、のちに大納言に至った。平清盛の娘を妻とし、恋の贈答を集めた「隆房集」がある。
次歌の第九百二十四首は小侍従の「君恋ふと浮きぬる魂の」で、本歌の「浮かれん魂」と「浮きぬる魂」、「つまにとどまれ」と「つまに結ばれぬらん」がそれぞれ対応する。本歌は男の側からさまよう魂を恋人の褄にとどめようとし、次歌は女の側からさまよい出た魂の行方を問うて、二首は対をなしている。
初句「恋ひ死なば」の「恋ひ死ぬ」は恋い焦がれて死ぬ意で、未然形に「ば」が付いた仮定条件で、恋い死にしたならば、の意である。
二句「浮かれん魂よ」の「浮かる」は身を離れてさまよい出る意、「ん」は推量の助動詞「む」の連体形、「よ」は呼びかけの間投助詞である。次歌の第九百二十四首の二句「浮きぬる魂の」と応じる。
三句「しばしだに」の「だに」は最小限の願いを表す副助詞で、せめてしばらくの間でも、の意である。
四句「我が思ふ人の」は、私の恋い慕う人の、の意である。
結句「つまにとどまれ」の「つま」は着物の裾の左右の端である褄をいい、さまよう魂を衣の褄に結びとどめる魂結びの習わしを思わせる。「とどまれ」は命令形である。次歌の第九百二十四首の四句「いかなるつまに」と応じる。
うかる:身を離れてさまよい出る
たま:魂
つま:着物の裾の左右の端、褄
- 作者
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藤原隆房
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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思ひ出でよ夕べの雲もたなびかば これやなげきに絶えぬ煙と
- 次の歌
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君恋ふと浮きぬる魂のさ夜更けて いかなるつまに結ばれぬらん