思ひ出でよ夕べの雲もたなびかば
これやなげきに絶えぬ煙と
- 歌の意味
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思い出してほしい。夕べの雲がたなびいたならば、これこそが、嘆きのあまり命の絶えた私を焼いた煙なのだと。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 922
詞書「題しらず」
思い出してほしい、夕べの雲がたなびいたならば、これこそ嘆きのあまり命の絶えた私の煙なのだと、と詠む。恋の嘆きのために死んだ自分が火葬される煙を夕べの雲に重ね、その雲を見たら私を思い出してほしいと相手に呼びかけている。死後になってでも恋しい人の心にとどまりたいという、哀切な願いを詠んだ歌である。
作者の「右近中将忠良」は藤原忠良である。摂政藤原基実の子で、右近中将を務め、のちに大納言に至った。
本歌から第九百二十四首までは、恋のために死ぬことや、身を離れてさまよう魂を詠む歌が続いている。
初句「思ひ出でよ」は字余りである。「思ひ出で」は思い出す意の「思ひ出づ」の命令形で、思い出してほしい、の意である。ここで句切れとなる。
二句「夕べの雲も」は、夕方の空にかかる雲も、の意である。火葬の煙が雲となって空にたなびくという見方を背景にする。
三句「たなびかば」の「たなびく」は雲や霞が横に長く引く意で、未然形に「ば」が付いた仮定条件で、たなびいたならば、の意である。
四句「これやなげきに」の「や」は疑問の係助詞で、結びは省略されている。「なげき」は「嘆き」と、薪の意の「投げ木」を掛け、結句の「煙」と縁語になる。
結句「絶えぬ煙と」の「絶え」は命の絶える意、「ぬ」は完了の助動詞で、嘆きのあまり命の絶えた私を焼く煙だと、の意である。「と」で初句の「思ひ出でよ」へ返る倒置の形となる。
なげき:嘆きの意と、薪の意の投げ木を掛ける
たなびく:雲や霞が横に長く引く
たゆ:命が絶える、死ぬ
- 作者
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藤原忠良
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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はかなくも来む世をかねて契るかな 再び同じ身ともならじを
- 次の歌
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恋ひ死なば浮かれん魂よしばしだに 我が思ふ人のつまにとどまれ