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これはみな思ひしことぞ馴れしより
あはれ名残をいかにせんとは

歌の意味
これはみな、かねてから思っていたことだ。馴れ親しんだ時から、ああ、別れたあとの名残をどうしたらよいのだろうかと。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 902

詞書「題しらず」
 これはみな思っていたことだ、馴れ親しんだ時から、ああ、名残をどうしようかと、と詠む。親しくなった初めから、いつか別れが来て、その名残に苦しむことになるだろうと予感していたが、今まさにそのとおりになったと、予感の的中した嘆きを表している。別れの悲しみを、すでに逢瀬の初めから抱いていた恐れの成就として捉えた一首である。
 作者の「右近中将忠良」は藤原忠良である。摂政藤原基実の子で、右近中将を務め、のちに公卿に列した。
 本巻の第八百四十一首は「これもみな」と、思うにまかせぬ恋を前世の因縁に帰する歌で、本歌は「これはみな」と、かねての予感に帰している。初句、二句がよく似た言い回しで始まり、対応している。

 初句「これはみな」はこのことはすべて、の意で、今の別れの苦しみを指す。本巻の第八百四十一首の初句「これもみな」と似た言い回しで、対応している。
 二句「思ひしことぞ」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、かねて思っていたことだ、の意である。「ぞ」は強意の係助詞である。ここで句切れとなる。
 三句「馴れしより」の「馴る」は馴れ親しむ意で、「より」は起点を示す格助詞である。馴れ親しんだ時から、の意となる。
 四句「あはれ名残を」の「あはれ」は嘆きの感動詞で、「名残」は別れたあとに残る思い、心残りのことである。
 結句「いかにせんとは」の「せん」は「す」の未然形に意志、推量の助動詞「ん」が付いたもので、どうしようかと、の意である。「とは」で二句の「思ひしこと」の内容を示し、倒置の形で結んでいる。

なる:馴れ親しむ
なごり:別れたあとに残る思い、心残り
作者
藤原忠良
出典
千載和歌集
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嘆きつつ交はさぬ夜半の積もるには 枕も疎くならぬものかは
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死ぬとても心を分くるものならば 君に残してなほや恋ひまし