いづくより吹きくる風の散らしけん
誰もしのぶの森の言の葉
- 歌の意味
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どこから吹いてきた風が散らしたのだろうか。誰もが忍んでいた、信夫の森の木の葉のような、私たちの言葉を。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 827
詞書「女に忍びて語らふこと侍りけるを、聞こゆることの侍りければ、遣はしける」
女と人目を忍んで語らっていたのを、噂として人に知られることがあったので、女に贈った歌である。どこから吹いてくる風が散らしたのだろう、誰もが忍んでいた信夫の森の言の葉を、と詠む。二人だけで忍んで交わしていた言葉が人に漏れたことを、陸奥の歌枕信夫の森の木の葉が風に散らされたことになぞらえ、噂の出どころをいぶかる歌である。
作者の「左兵衛督隆房」は藤原隆房である。権大納言藤原隆季の子で、左兵衛督を務め、のちに大納言に至った。平清盛の娘を妻とし、恋の贈答を集めた「隆房集」がある。
前歌と前々歌は名乗るかどうかを詠んだが、本歌は秘めた恋が人に知られた後を詠み、忍ぶ恋が明るみに出ていく流れをなしている。
初句「いづくより」は、どこから、の意で、噂の出どころをいぶかる。
二句「吹きくる風の」は、吹いてくる風が、の意で、噂を広めたものを風にたとえる。
三句「散らしけん」の「けん」は過去推量の助動詞「けむ」で、散らしたのだろうか、の意である。ここで句切れとなり、下の句と倒置の関係にある。
四句「誰もしのぶの」の「しのぶ」は、人目を「忍ぶ」意と、陸奥国の歌枕「信夫」とを掛ける。誰もが忍んでいた、の意である。
結句「森の言の葉」は体言止めで、「言の葉」の「葉」は「森」の縁語である。二人の交わした言葉を、森の木の葉にたとえる。
しのぶ:人目を「忍ぶ」に、陸奥国の歌枕「信夫」を掛ける
ことのは:言葉。森の「葉」の縁で用いる
- 作者
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藤原隆房
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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知られても厭はれぬべき身ならずは 名をさへ人に包むべしやは
- 次の歌
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思ひかね夢に見ゆやと返さずは 裏さへ袖は濡らさざらまし