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嬉しさや片敷く袖に包むらん
今日待ち得たる宇治の橋姫

歌の意味
うれしさを、独り寝に片敷く袖に包んでいるのだろうか。今日ついに待ち迎えた宇治の橋姫は。
鑑賞
巻第七 賀歌 742

詞書「建久七年入道前関白太政大臣宇治にて人々に歌よませ侍りけるに」
 宇治を詠む一連の一首目である。今日待ちかねた人を迎えた宇治の橋姫は、うれしさを片敷く袖に包んでいるのだろうかと詠む。詞書によれば、建久七年、入道前関白太政大臣が宇治で人々に歌を詠ませた折の歌である。
 作者は藤原隆季の子で、権大納言に至った。
 場面は建久七年の宇治への来訪の日、場所は宇治川に架かる宇治橋のほとりである。
 直接の契機は、建久七年(1196)、入道前関白太政大臣が宇治で人々に歌を詠ませた催しである。詞書の「入道前関白太政大臣」は、出家した、前の関白で太政大臣であった人を指す呼称である。
 本歌は『古今和歌集』のよみ人しらずの歌「さむしろに衣片敷き今宵もや我を待つらむ宇治の橋姫」である。宇治の橋姫は宇治橋にまつわる女神で、恋人を待つ女性として歌に詠まれた。

 初句「嬉しさや」の「や」は疑問の係助詞で、三句の「らん」で結ぶ。橋姫の喜びを思いやる形で始まる。
 二句「片敷く袖に」は、独り寝のために自分の衣の袖だけを敷く、その袖に、の意である。本歌の「衣片敷き」を受け、待つ身の独り寝の姿を示す。
 三句「包むらん」は、包んでいるのだろうか、の意で、ここで意味が切れる三句切れである。うれしさを袖に包むという言い方には、『古今和歌集』のよみ人しらずの歌「うれしきを何に包まむ唐衣」の先例がある。
 四句「今日待ち得たる」は、今日ついに待ち迎えた、の意である。本歌で夜ごと待ち続けていた橋姫が今日待ち得たとして、宇治への来訪を喜びに転じる。
 結句「宇治の橋姫」は体言止めである。本歌の結句をそのまま用い、待つ嘆きの歌を迎える喜びの歌へと反転させている。次歌の第七百四十三首は「宇治の橋守」を詠み、宇治橋にかかわる二首が並ぶ。

かたしく:独り寝で自分の衣の袖だけを敷く
はしひめ:橋を守る女神。宇治の橋姫は恋人を待つ女性としても詠まれる
作者
藤原隆房
出典
新古今和歌集
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