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旅の世にまた旅寝して草枕
夢のうちにも夢を見るかな

歌の意味
この世そのものが旅であるのに、さらに旅寝をして草枕で、夢のようなこの世の中でなお夢を見ることだ。
鑑賞
巻第八 羈旅歌 533

詞書「旅の歌とてよみ侍りける」
 旅の題で詠んだ歌である。この世そのものが旅であるのに、さらに旅寝をして、夢のようなこの世の中でなお夢を見ることだ、と詠む。人生を旅、この世を夢とする仏教的な見方に立ち、旅の中の旅、夢の中の夢という重ねの構造で、無常の世の頼りなさを表している。
 作者の「法印慈円」は関白藤原忠通の子で、九条兼実の弟である。天台座主に四度就き、歴史書「愚管抄」を著した。法印は僧の最高の位である。小倉百人一首にも歌が採られている。

 初句「旅の世に」は、この世そのものを旅と見た表現で、旅であるこの世に、の意である。本巻の第五百十七首の「いづこも旅の心地こそすれ」と通じる見方である。
 二句「また旅寝して」は、さらに旅寝をして、の意で、旅であるこの世の中でさらに旅をすることをいう。
 三句「草枕」は旅寝の意で、二句の旅寝を受けて重ねる。
 四句「夢のうちにも」は、夢のようなこの世の中にあっても、の意である。
 結句「夢を見るかな」の「かな」は詠嘆の終助詞である。初二句の旅と旅寝、四五句の夢と夢とが対をなし、重ねの構造をとる。次歌の第五百三十四首も旅寝の夢を詠む。

くさまくら:草を結んで枕とすること、旅寝
作者
慈円
出典
千載和歌集
前の歌
よしさらば磯の苫屋に旅寝せん 波かけずとて濡れぬ袖かは
次の歌
草枕仮寝の夢に幾たびか 慣れし都に行き帰るらん