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よしさらば磯の苫屋に旅寝せん
波かけずとて濡れぬ袖かは

歌の意味
ええ、それならば磯の苫屋で旅寝をしよう。波がかからないからといって、濡れない袖であろうか、いや涙で濡れるのだ。
鑑賞
巻第八 羈旅歌 532

詞書「旅宿の心をよみ侍りける」
 旅宿という題で詠んだ歌である。ええ、それならば磯の苫屋で旅寝をしよう、波がかからないからといって濡れない袖であろうか、と詠む。どこで寝ても旅の涙で袖は濡れるのだから、いっそ海辺の苫屋に泊まろうと、旅の悲しみに開き直るように詠んでいる。
 作者の「仁和寺法親王(守覚)」は守覚法親王である。後白河天皇の第二皇子で、仁和寺の門跡となり、北院御室と呼ばれた。歌を好み、多くの歌人と交わった。

 初句「よしさらば」は、ええい、それならば、の意で、思い切りをつける語である。
 二句「磯の苫屋に」は、磯辺の苫屋に、の意である。本巻の第五百十五首も「磯の苫屋」の旅寝を詠む。
 三句「旅寝せん」の「ん」は意志の助動詞で、旅寝をしよう、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「波かけずとて」の「とて」は、といって、の意で、波がかからないからといって、の意である。前歌の第五百三十一首の「波もかけけり」を受けるような句である。
 結句「濡れぬ袖かは」の「かは」は反語で、濡れない袖であろうか、いや涙で濡れるのだ、の意である。

とまや:苫で屋根を葺いた粗末な小屋
作者
守覚法親王
出典
千載和歌集
前の歌
あはれなる野島が崎の庵かな 露置く袖に波もかけけり
次の歌
旅の世にまた旅寝して草枕 夢のうちにも夢を見るかな