秋の野の千草の色にうつろへば
花ぞかへりて露を染めける
- 歌の意味
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秋の野の露が、さまざまな草の色に移り変わって見えるので、露が花を染めるのではなく、かえって花が露を染めていたのだった。
- 鑑賞
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巻第四 秋歌上 262
詞書「野花露といへる心をよみ侍りける」
「野花露(野の花の露)」という題で詠んだ歌である。秋の野に置く露が、それぞれの草花の色を映して千草の色に移り変わって見えるので、露が花を染めるのではなく、かえって花のほうが露を染めていたのだ、と詠む。露が草木を染めるという古来の見立てを逆転させた理知的な一首である。
作者の「仁和寺法親王(守覚)」は後白河天皇の第二皇子である。出家して仁和寺に入り、仁和寺の御室となった。和歌を好み、多くの歌人に百首歌を詠ませた。
古今和歌集の藤原敏行の歌「白露の色はひとつをいかにして秋の木の葉を千々に染むらむ」のように、露が草木を染めるという見立ては古くから詠まれてきた。本歌はそれを反転させ、花が露を染めると詠む。
初句「秋の野の」は、二句の「千草」にかかる。
二句「千草の色に」は、さまざまな草の色に、の意である。本巻の第二百五十首「千草の色に」と同じ句である。
三句「うつろへば」の「うつろふ」は、色が移り変わる意で、已然形に「ば」が付いた確定条件である。露が草花の色を映して移り変わるので、の意となる。
四句「花ぞかへりて」の「かへりて」は、かえって、逆に、の意である。「ぞ」は係助詞で、結句の「ける」と係り結びをなす。露が花を染めるという常識を逆転させる。
結句「露を染めける」の「ける」は気づきを表す「けり」の連体形で、「ぞ」の結びとなる。次歌の第二百六十三首も露を詠み、本歌から第二百六十七首まで露の歌が続く。
うつろふ:色が移り変わる
- 作者
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守覚法親王
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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さまざまの花をば宿に移し植ゑつ 鹿の音誘へ野辺の秋風
- 次の歌
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草木まで秋のあはれを忍べばや 野にも山にも露こぼるらん