さまざまの花をば宿に移し植ゑつ
鹿の音誘へ野辺の秋風
- 歌の意味
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さまざまな秋の花は、もうわが家の庭に移し植えた。あとは鹿の声を誘って運んできてくれ、野辺の秋風よ。
- 鑑賞
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巻第四 秋歌上 261
詞書「家に百首歌よませ侍りける時、草花の歌とてよみ侍りける」
自邸で歌人たちに百首歌を詠ませた際に、作者みずから「草花」を題として詠んだ歌である。野のさまざまな秋の花はもうわが家の庭に移し植えたので、あとは野の鹿の声を誘って運んできてくれ、野辺の秋風よ、と詠む。花は移し植えられても声は移せないので、それを秋風に頼むという趣向で、庭に秋の野をそっくり再現しようとする風雅な心を表している。
作者の「摂政前右大臣」は九条兼実である。関白藤原忠通の子で、右大臣を経て摂政に至った。千載和歌集の成立当時の摂政であり、日記「玉葉」を残した。
本巻の第二百五十六首「さまざまに」と同じく秋の野の多様さを詠み、第二百五十七首が野辺を住まいとしたのに対し、本歌は野を家に移そうとしている。
初句「さまざまの」は、いろいろな、の意である。本巻の第二百五十六首「さまざまに」と響き合う。
二句「花をば宿に」の「をば」は対象を強調する助詞で、花は家に、の意である。
三句「移し植ゑつ」の「つ」は完了の助動詞で、移し植えてしまった、の意である。六音の字余りで、ここで句切れとなる。
四句「鹿の音誘へ」の「誘へ」は命令形で、鹿の声を誘ってこい、の意である。目で見る花に対して、耳で聞く鹿の声を求める。
結句「野辺の秋風」は体言止めで、呼びかけの相手を示す。
うつしうう:移し植える
しかのね:鹿の鳴く声
- 作者
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九条兼実
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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なにとなく物ぞ悲しき菅原や 伏見の里の秋の夕暮
- 次の歌
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秋の野の千草の色にうつろへば 花ぞかへりて露を染めける