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天の下三笠の山の陰ならで
頼む方なき身とは知らずや

歌の意味
天下をおおう三笠の山の陰でなくては、頼るところのない身であると、神はご存じないのだろうか。
鑑賞
巻第十九 神祇歌 1897

詞書「家に百首歌詠み侍りける時、神祇の心を」
 春日社を詠む一連の三首目である。天下をおおう三笠山の陰のほかに頼るところのない身だと、神は知らないのかと詠む歌である。詞書によれば、作者の家で百首歌を詠んだとき、神祇を題に詠んだ歌である。藤原氏の氏神である春日の神だけを頼みとする心を、ひたむきに訴えている。
 原文には作者名が記されておらず、前歌の作者の九条兼実に続く歌として扱う。
 三笠山は春日社の背後にある山で、藤原氏の氏神である春日の神の鎮まる山として詠まれる。

 初句「天の下」は、天下、の意である。三笠山の「笠」が天下をおおうという連想で、二句にかかる。
 二句「三笠の山の」は、春日社の背後の三笠山である。「笠」の縁で三句の「陰」を導く。
 三句「陰ならで」は、陰でなくては、の意である。「陰」は山陰であり、神の庇護の意も表す。
 四句「頼む方なき」は、頼るところのない、の意である。
 結句「身とは知らずや」は、身であるとはご存じないのか、の意である。係助詞「や」で問いかけ、神に訴える。前歌の春日祭の晴れやかな景から、春日の神を頼む述懐へと移る。本巻の第千八百九十二首の「何に頼みをかけて」と、神のほかに頼みがないという心を詠む点で通う。

みかさのやま:春日社の背後にある山。三笠山
かげ:物に遮られて光の当たらない所。転じて庇護
作者
九条兼実
出典
新古今和歌集
前の歌
今日祭る神の心やなびくらん 四手に波立つ佐保の川風
次の歌
春日野のおどろの道の埋れ水 末だに神のしるし顕はせ