忍ぶるに心のひまはなけれども
なほもるものは涙なりけり
- 歌の意味
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恋を忍んでいるので、心にはすきまもないのだけれど、それでもなお漏れ出るものは涙であったよ。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 1037
詞書「百首歌よみ侍りける時忍恋」
長く秘めた恋を詠む一連の五首目である。恋を忍ぶ心にはすきまもないのに、それでもなお漏れるのは涙だと詠む。詞書によれば、百首歌を詠んだ折の「忍恋」の題による歌である。
作者の「入道前関白太政大臣」は九条兼実である。関白藤原忠通の子で、摂政、関白、太政大臣を歴任し、のち出家した。日記『玉葉』を残し、九条良経の父、慈円の兄にあたる。
初句「忍ぶるに」は、恋を秘め隠しているので、の意である。
二句「心のひまは」の「ひま」はすきまで、忍ぶ心には隙がない、と言う。本巻の第千二首の高遠歌も「いかなるひまに」と、涙の漏れるすきまを問うていた。
三句「なけれども」は逆接で、すきまはないけれども、と下の句に転じる。
四句「なほもるものは」は、それでもなお漏れ出るものは、の意で、前歌の「涙もらすな」を受ける。
結句「涙なりけり」の「けり」は気づきの詠嘆である。本巻の第千三首の謙徳公歌と同じ結句である。前歌の式子内親王歌が枕に涙を漏らすなと命じたのに対し、この歌は、それでも漏れるのは涙だと、禁じても漏れる涙で答える形になっている。
ひま:すきま
もる:すき間からこぼれ出る
- 作者
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九条兼実
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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我が恋は知る人もなしせく床の 涙もらすなつげの小枕
- 次の歌
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つらけれど恨みんとはた思ほえず なほ行く先を頼む心に