つらけれど恨みんとはた思ほえず
なほ行く先を頼む心に
- 歌の意味
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あなたはつれないけれど、恨もうとは、やはり思われない。それでもなお、この先を頼みにする心があるので。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 1038
詞書「冷泉院みこの宮と申しける時さぶらひける女房を見かはして言ひわたり侍りけるころ手習ひしけるところにまかりて物に書きつけ侍りける」
謙徳公と女房の贈答二首の一首目である。相手はつれないが、なお行く先を頼みにする心があるので恨もうとは思わないと詠む。詞書によれば、冷泉院が皇太子であったころに仕えていた女房と見交わして言い寄っていたころ、女房が手習いをしていた所へ行き、物に書きつけた歌である。
作者の「謙徳公」は藤原伊尹である。右大臣藤原師輔の長男で、摂政太政大臣に至った。謙徳公は死後に贈られた諡である。家集に『一条摂政御集』がある。
冷泉院は村上天皇の皇子で、のちの冷泉天皇である。母は伊尹の妹の中宮安子で、伊尹はその叔父にあたる。
次歌は、この歌に対する女房の返しである。
初句「つらけれど」は、あなたがつれないけれど、の意である。
二句「恨みんとはた」の「はた」は、やはり、の意である。
三句「思ほえず」は、自然とは思われない、の意で、ここで三句切れとなる。
四句「なほ行く先を」は、それでもなお、この先を、の意である。
結句「頼む心に」は、頼みにする心があるので、の意で、倒置によって恨まない理由を示す。前歌までの一連がひとり忍ぶ恋を詠んだのに対し、ここからは相手と言葉を交わす恋の贈答となり、次歌の返しが「頼む」の語を受けて応じている。
みこのみや:皇太子
てならひ:筆で思うままに書きすさぶこと
おもほゆ:自然と思われる
- 作者
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藤原伊尹
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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忍ぶるに心のひまはなけれども なほもるものは涙なりけり
- 次の歌
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雨もこそは頼まばもらめ頼まずは 思はぬ人と見てをやみなん