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更けゆかば煙もあらじ塩釜の
うらみなはてそ秋の夜の月

歌の意味
夜が更けたなら煙もなくなるだろう。塩釜の浦を見尽くしてくれるな、また恨み果ててくれるな、秋の夜の月よ。
鑑賞
巻第四 秋歌上 390

詞書「百首歌たてまつりし時」
 月の十五首目である。塩釜の浦を照らす月に、見尽くすなと呼びかける。詞書によれば百首歌を詠進した折の一首である。
 作者の「前大僧正慈円」は慈円である。本巻では第三百五十二首
第三百六十首
第三百七十九首に続く四度目の登場となる。
 場面は秋の夜、場所は陸奥国の歌枕である塩釜の浦(現在の宮城県塩竈市)である。製塩のための藻塩焼きの煙が名物として詠まれた。
 直接の契機は百首歌の詠進である。

 初句「更けゆかば」は仮定条件で、夜が更けたなら、の意である。
 二句「煙もあらじ」の「じ」は打消推量である。藻塩焼きの煙は夜が更ければ絶えるから、見るべきものがなくなることになる。
 三句「塩釜の」で場所が定まる。
 四句「うらみなはてそ」の「うらみ」は、浦を見る意と、恨む意との掛詞である。「な〜そ」は禁止を表し、「はつ」はすっかり〜しきる意である。浦を見尽くすな、また恨み果てるな、の二つの意が同時に働く。
 結句「秋の夜の月」は体言止めで、呼びかけの相手が最後に置かれる倒置である。第三百七十五首
第三百八十五首でも用いられた結句であり、この一連で三度目となる。名所の名物である煙が消える前に照らしてほしいという、地名に即した願いである。

しほがま:陸奥国の歌枕。現在の宮城県塩竈市。藻塩焼きの煙で知られた
うらみ:浦を見る意と、恨む意を掛ける
な〜そ:禁止を表す言い方。〜するな
作者
慈円
出典
新古今和歌集
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