古典和歌stream

眺めつつ思ふもさびし久方の
月の都の明け方の空

歌の意味
眺めながら思うことさえ寂しい。月の都の、明け方の空よ。
鑑賞
巻第四 秋歌上 392

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 月の十七首目である。月にあるという都を思うことの寂しさを詠む。原文では詞書が改めて記されていない。
 作者の藤原家隆は本巻では第三百八十九首に続く五度目の登場となる。
 場面は秋の明け方、場所は地上であるが、思いは月の都に向けられる。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。
 月に都があるという想像は『竹取物語』などに見え、和歌でも用いられた。

 初句「眺めつつ」の「眺む」は物思いにふけって見る意で、「つつ」は継続を表す。
 二句「思ふもさびし」の「も」は、思うことまでも、の含みである。見るだけでなく思うことさえ寂しいという言い方になる。
 三句「久方の」は「月」に掛かる枕詞である。巻第三の第二百六十六首、本巻の第三百二十一首でも用いられた。
 四句「月の都の」は月にあるという都をいう。地上の都と対をなす場所であり、手の届かない場所として置かれる。
 結句「明け方の空」は体言止めである。明け方は月の消える時刻であり、思いの向かう先が失われる時刻でもある。第三百七十九首の慈円歌が涙で曇る月を詠み、第三百九十一首が色の変わる月光を詠んだのに続き、この歌は月そのものではなく、その彼方の都へ思いを飛ばしている。

ながむ:物思いにふけって見る
ひさかたの:「月」に掛かる枕詞
つきのみやこ:月にあるという都
作者
藤原家隆
出典
新古今和歌集
その他の歌