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時しもあれふるさと人は音もせで
み山の月に秋風ぞ吹く

歌の意味
折もあろうに、古里の人は便りもよこさず、深山の月に秋風が吹いている。
鑑賞
巻第四 秋歌上 394

詞書「建仁元年三月歌合に山家秋月といふことをよみ侍りし」
 月の十九首目である。詞書の「山家秋月」は、山の家の秋の月、の意である。山に住む者のもとへ便りの絶えることを詠む。原文では作者名が改めて記されておらず、前の歌と同じ作者が続くことを示している。
 作者は前歌に続いて藤原良経である。
 場面は秋の夜、場所は深い山の家である。
 直接の契機は建仁元年(一二〇一年)三月の歌合への出詠である。巻第一の第七十二首、巻第三の第二百三十七首も同じ歌合の詠である。

 初句「時しもあれ」は、ほかに時もあろうに、の意である。巻第二の第百二十一首の具親歌でも用いられた語で、よりによってこの時に、という不満を表す。
 二句「ふるさと人は」は古里の人をいう。前歌の「ふるさと」を受ける語であり、二首が語を共有している。
 三句「音もせで」の「音」は便り、消息をいう。「で」は打消の接続助詞である。何の知らせもないことになる。
 四句「み山の月に」の「み」は接頭語で、深い山をいう。
 結句「秋風ぞ吹く」は「ぞ」の係り結びである。人の便りは絶え、月と風だけがあるという構成であり、巻第三の第二百三十二首の定家歌が長雨によって言伝ても絶えたと詠んだのと同じ、人の交わりの断絶を主題としている。

ときしもあれ:ほかに時もあろうに
おと:便り。消息
みやま:奥深い山。「み」は接頭語
作者
藤原良経
出典
新古今和歌集
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