鳰の海や月の光のうつろへば
波の花にも秋は見えけり
- 歌の意味
-
鳰の海よ、月の光が移ろうので、波の花にも秋が見えるのだった。
- 鑑賞
-
巻第四 秋歌上 389
詞書「和歌所歌合に湖辺月といふことを」
月の十四首目である。詞書の「湖辺月」は、湖のほとりの月、の意である。湖面の波に映る月光に秋を見る。
作者の藤原家隆は『新古今和歌集』の撰者の一人である。本巻では第二百八十九首
第二百九十二首
第三百七十六首に続く四度目の登場となる。
場面は秋の夜、場所は近江国の琵琶湖である。鳰の海は琵琶湖の別称で、鳰は鳥のかいつぶりをいう。
直接の契機は和歌所の歌合への出詠である。
初句「鳰の海や」は地名に詠嘆の間投助詞を添えた形である。
二句「月の光の」で対象が示される。
三句「うつろへば」の「うつろふ」は移り動く意と、色が褪せる意をもつ。水面を光が移っていくさまと、秋の色の変化とが重ねられる。巻第二の第百三十七首
第百五十七首では花の色褪せる意で用いられていた。
四句「波の花にも」の「波の花」は白く砕ける波を花に見立てた語である。巻第二の第百三十二首でも波と花が結ばれていた。「も」は、波の花にまでも、の含みである。
結句「秋は見えけり」は「けり」による言い切りである。本来色のない波に秋が見えるという言い方であり、第二百九十首の秀能歌が色のない風に秋を見たのと同じ型である。
にほのうみ:琵琶湖の別称。鳰はかいつぶり
うつろふ:移り動く。また色が褪せる
なみのはな:白く砕ける波を花に見立てた語
- 作者
-
藤原家隆
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-